◆今日はこの人
子ども文庫を主宰
今西茂子さん
兵庫県の丹波篠山市今田町で子ども文庫「文庫『もりのなか』こどものとしょかん」を開いて20年目の「文庫のおばちゃん」。どんな本でも内容を覚えていて、軽いブックトークができるのだとか。
※「子ども文庫」とは……?
私設図書館の⼀種で、⺠間の個⼈が⾃ら集めた児童書などの蔵書を公開し、家などを開放して、⼦どもたちに本を貸し出したり、読み聞かせの会を開いたりする⼩規模な図書館のことです。
最古の⼦ども⽂庫は、作家で編集者の⽵貫佳⽔⽒の「⽵貫少年図書館」だとされており、その後⽇本全国で開設されるようになりました。また、⼦ども⽂庫としてスタートした、かつら⽂庫(⽯井桃⼦⽒)、⼟屋児童⽂庫(⼟屋滋⼦⽒)、松の実⽂庫(松岡享⼦⽒)が⺟体となって東京⼦ども図書館の設⽴に⾄るなど、絵本・児童書と⼦どもたちをつなげる場として⼤きな役割を果たしています。
今⻄さんによると、⼦ども⽂庫のような図書館は、海外にはあまり例がなく、⽇本独⾃の⽂化だそう。皆さんもぜひ、⼦ども⽂庫へ⾜を運んでみてください。
▶なぜ、⽂庫「もりのなか」を始めたのですか?
幼い頃から病気がちだったので、⼩学校の頃はあまり学校に⾏けず、⼀⼈家で本ばかり読んでしました。けれども、ここ(今⽥町)は⽥舎なので、図書館も本屋もないんです。だから、⼩さい頃から「ここで図書館を開きたい」というのが夢でした。
⼦育てが⼀段落した頃に、「いよいよ夢を叶えたい」と考えて、司書の勉強を始めました。⾃分の⼦どもに本を⼿渡すのではなく、不特定多数の⼈、特に⼦どもたちに本を紹介するのには、責任が伴うと思ったからです。司書資格を取った後も、基礎から児童⽂学論やストーリーテラー、昔話について⼗数年間学びました。
そして、ご縁があって絵本や児童書を譲り受け、⾃分の蔵書と合わせて2000冊くらいになり、「そろそろ」と思ったときに、運よく場所がみつかったので、⽂庫「もりのなか」を始めました。エッツの絵本『もりのなか』からの命名です。
今でも勉強は続けていて、古典児童⽂学やヤングアダルト、イギリス児童⽂学の勉強会に参加しています。昔話が児童⽂学の原点だと知れたり、学ぶことってすごく楽しいんです。⾃分の世界を広げてくれて、本の世界は本当に魅⼒的で、深いんだな、と。
きっと、好奇⼼を失わずに学び続けることも、⼦どもの本がくれたものだと思います。
▶⽂庫「もりのなか」のやりがいはどういったところですか?
⾃分が⼿渡した本が、⼦どもたちに届いていることを実感できることです。今は楽しいだけかもしれないけれど、⼤⼈になって深い意味がわかって、⼒になってくれるんじゃないかな。⼩さな⼦どもたちと本の世界を共感でき、⼀緒に楽しめることもやりがいです。
「もりのなか」を出た⼦の中で、⼤学で⽂学の道へ進んだり、出版社に勤めたり、司書を仕事にしようかと悩んだりする⼦がいるのですが、こういうこと(家庭⽂庫の運営)をして⽣きている⼤⼈がいることで、⼦どもたちに影響を与えることができると分かって、嬉しいです。
▶⽂庫「もりのなか」では、本の貸し出しや読み聞かせ会だけでなく、天体観測などのイベントも開催されています。
他⼈が書いた⾔葉や世界を理解するためには、⾃分の中に体験がないと楽しめません。
「もりのなか」には物語の本だけでなく、科学読み物なども揃えているのですが、例えば、⽉の本にしても、実際に天体望遠鏡を通して⽉を⾒ることで、本を深く楽しめるんです。だから、春のバードウォッチングや天体ショーに合わせた天体観測会などを開いています。
実際の体験で⾃然の神秘や不思議さを感じる、それがあって初めて、本を楽しめるんだと思います。⾃然と⽂化の両⽅に出会える場、そういう機会になれば、というのが私のささやかな願いです。
また、⾳楽の演奏会も開いています。⾳楽が「わかる」「わからない」ではなく、本物に触れて、感じる、楽しむことが⼤切だと考えているからです。
▶今⻄さんご⾃⾝が好きな本を教えてください。
⽂庫「もりのなか」に置いている本は全部好きです!⾼校⽣のときに読んだ本は印象に残っているものが多いのですが、そのなかでも『⾵と共に去りぬ』は私の⾎となり⾁となっています。授業中も休み時間もずっと読んでいたのを覚えていますが、「授業なんていらないっ!」というくらいの気概でした(笑)。
~ つ・づ・く ~
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